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コラム

水上バイクの危険性について

今年も水上バイクの事故がニュースを騒がせていますが、毎年夏になると水上バイクの事故ニュースが出ます。
「水上バイクってそんな危険な物なの?」と思って調べた人も居ることでしょう。

今回は水上バイクの危険性についてお話しようと思います。

水上バイクは超重い

水上バイクって水の上に浮いているので軽そうに見えますが、実は水上バイクは200~500kgもの重量があります。
こんな重い物が人間にぶつかったら、大けがでは済みませんよね。

ハーレーダビッドソンが300~500kgくらい、競馬のサラブレッドが450~500kgくらいらしいので、これらが生身の人間にぶつかってくるような物です。
しかも、陸上と違って、ぶつかっても突き飛ばされるわけではなく、水に捕らわれている状態なので、全ての衝撃が身体に来ます。

水上バイクは超速い

水上の乗り物というと、船やヨットが一般的なので、ゆっくり動いているイメージがあると思いますが、これらの乗り物はサイズが大きいので乗っていても速度を感じにくく、陸から見ると距離があるのでゆったりと動いているように見えますが、結構スピードが出ます。

そして、水上バイクはというと、もっと速いです。
わずか数秒で100km/h近くまで加速する水上バイクもあります。

当然、100km/hも出ていると、前方に遊泳客を確認してもハンドルを切る前に、遊泳客にぶつかってしまいます。

水上バイクにブレーキはないので、急に止まれない

水上の乗り物全般に言えることですが、ブレーキという装置は付いていません。
水上では常に水圧という制動力が働いているため、アクセルを戻せば急激に速度が落ちるからです。

それでも速度を出している場合、アクセルを戻してから速度が落ちるまでには時間がかかります。
無茶な速度で運転していると「あ、危ない!」と思った時には、アクセルを戻しても止まる手段がないため、どうにもならなくなってしまっていることがあります。

水上バイクはアクセルを開けないと曲がれない

これは船や水上バイクの免許を持っていない人にはあまり知られていないことですが、水上バイクは車と違って、アクセルを開けて推進力を得ないと曲がることができません。

車はボディに対して、タイヤの向きを自由に変えることができ、タイヤの向きに曲がります。
しかし、水上バイクにはタイヤはありませんし、船のような舵さえありません。

水上バイクの方向変換は、ハンドルを切って、ジェット水流を斜め横に排出することで、力づくで向きを変えています。
そのため、ハンドルを切っていても、アクセルOFFすると曲がれないのです。

もし前方に人や船が居て、「危ない!」と思ってとっさにアクセルを戻してしまうと、向きを変えるための推力を失うため、ハンドルを切っても曲がれなくなってしまうんですね。

水上バイクは船底から水を吸い上げている

これどういうことかと言いますと、水上バイクの推力はスクリューです。
しかし、船のスクリューとは違って、むき出しのスクリューではないんですね。

水上バイクのスクリューは飛行機のエンジンのように、筒の中に収められており、筒の出口付近を絞ることで、水流を加速させて、ジェットエンジンのような推力を得ています。

しかし、筒の中から水を出しているということは、どこかから水を吸っているはずです。
その水の吸い口(インテーク)が船底にあります。

これがまた危険で、もし人の上に水上バイクが来てしまったら、髪の毛がインテークに吸い込まれてしまう可能性があるんですね。
これはプールの排水溝に人が吸い込まれるのと同じですね。

まとめ

水上バイクと遊泳者が同じ場所で遊ぶことは上記の理由から非常に危険です。
「危ない!」と思った時には、既に手遅れになっていることも多く、安全マージンをたくさんとって遊ぶ必要があります。
仲間内であっても、ふざけていて死亡事故につながる可能性が高いです。

水上バイクを危険な乗り物にするかどうかは結局は乗り手にかかっています。
少なくとも「水上バイクが居るから遊泳客が気を付けなければいけない」というのは間違っていると思います。
水上バイクを持ち込んだなら、水上バイクを持ち込んだ人が責任を持って、安全に運転すべきことです。

高性能な水上バイクに搭載されているスーパーチャージャーとは

水上バイクの世界でも、高性能機は300馬力の世界です。
そんな高性能な水上バイクには高性能なエンジンが搭載されています。

ヤマハであればSVHOエンジン、カワサキならULTRA 310シリーズに搭載されているエンジン、SeaDooならパフォーマンスモデルに搭載されているRotax 1630 ACEエンジン
これらは各社全てスーパーチャージャーが付いています。

スーパーチャージャーこそ高性能の証なのです。

スーパーチャージャーとは

エンジンは空気を吸って、圧縮して、爆発させて、ピストンを押すことで、動いています。
ピストンの往復運動を、クランクシャフトを通じて、回転エネルギーに変換することで、水上バイクならスクリューの回転運動に、車なら駆動輪の回転運動にしているわけです。

このような動力の作り方をするエンジンを『レシプロエンジン』と呼びます。
水上バイクをよく『ジェット』と言いますが、決してジェットエンジンが付いているわけではありません。

そして、エンジンには最初の工程で、空気を燃焼室に吸い込む『吸気』という工程があります。
スーパーチャージャーの出番はここです。

スーパーチャージャーはエンジンの吸気口前に取り付けるファンで、エンジンが空気を吸いやすいように、空気圧をかけておく装置です。
スーパーチャージャーがチャージするのはパワーというより空気なんですね。

ターボチャージャーとスーパーチャージャーの違い

車に乗る方はターボチャージャーはよくご存じだと思います。
昨今では、環境性能の観点から、ダウンサイジングターボが流行っており、軽自動車や小型車にはほとんどターボが付いていますよね。

実はこのターボも役割としてはスーパーチャージャーと同じで吸気圧をかける装置(過給機)になります。

では、ターボチャージャーとスーパーチャージャーの違いは何かというと、空気圧をかけるファンの動力をどこから得ているかが違うんですね。

ターボチャージャーは、エンジンからの排気圧でファンを回して過給します。
対して、スーパーチャージャーは回転するエンジンのクランクシャフトから動力を得ています。

ターボは排気圧(空気の力)で過給ファンを回しているため、物理的に動力と繋がっているわけではないんですね。
そのため、エンジンの回転数が低い時はあまり排気圧がかからず、過給も発生しにくいです。
そして、回転数が上がってくるにつれ、排気圧がかかって、過給ファンも回り始めます。
大きな過給ファンを付けるとそれだけ過給出来る空気圧も増えるのですが、ファンを回すための力もたくさん必要になってしまい、結果的にレスポンスの悪いエンジンになってしまうので、小さなファンや大きさの違うツインターボが用いられることが多いです。

対して、スーパーチャージャーはエンジンのクランクシャフトと物理的に繋がっています。
そのため、エンジンが少しでも回っていれば、過給ファンが回ってくれて、ターボと比較するとレスポンスが良いと言われます。
ただ、低回転で回ったとしても、それが過給できるほどの回転力になるかは別の話で、スーパーチャージャーが本格的に力を発揮するのは高回転時になります。

スーパーチャージャーによく出てくる『インタークーラー』とは

ターボやスーパーチャージャーにはお決まりのように、「インタークーラー付き」と書いてあります。
このインタークーラーって何を冷やしているのでしょうか。

話は変わりますが、みなさんキャンプはしますか?
キャンプやサバイバルグッズの中に『ファイヤーピストン』という物がありまして、筒の中に燃える物を入れて、棒で蓋をして、勢いよく棒を筒の中に押し込むと可燃物に引火するという仕組みです。

でんじろう先生がとても良い動画をYoutubeに掲載してくれていました。

『なぜ引火するか』ですが、棒と筒の摩擦熱ではありません。
筒の中の空気が棒を押し込んだことで圧縮され、空気が圧縮されたことによって熱を持って、その熱が可燃物に火をつけたのです。

さて、過給機の話に戻りますが、過給機も空気を集めて圧縮する装置です。
空気を圧縮すると熱くなります。空気が熱いとエンジンにとって良いことなんてないんですね。

  • 空気は温度が高いと膨張してしまって圧力がかかりにくくなる
  • 空気が熱いと不正燃焼を起こしやすくなる

だから、ターボやスーパーチャージャーで集めた空気は冷やしてやる必要があるんです。
そのためのクーラーがインタークーラーというわけです。

水上バイクに乗るには?

水上バイクって映画で逃走手段に使われたり、観光地でバナナボートをトーイング(引っ張る)するのに使われたり、意外と目にすることがあると思います。
でも、水上バイクに乗ってみたいなぁ~と思っても、どうしたら良いかわからないですよね。

今回は水上バイクを所有するようなガッツリではなく、ちょっと運転したい。ちょっと遊びたいだけ。という時に、どうしたら水上バイクに乗れるかをご紹介します。

水上バイクを操縦する(ハンドルを握る)には免許が必要

まず、水上バイクを自身で操縦したい場合は、日本では操縦免許が必要になります。

かつては免許所持者が後ろに乗っていれば、免許を持っていなくても運転することが出来ました。
しかし、現在では

水上バイクの操縦には、小型船舶操縦免許(特殊)が必要になります。
小型船舶操縦免許(1級)や(2級)だけでは水上バイクを運転できませんので、ご注意ください。
小型船舶操縦免許(特殊)は1級や2級の下位免許ではなく、別分類となります。
そのため、よく教習所では「小型船舶操縦免許(1級+特殊)」などと記載されています。

小型船舶操縦免許(特殊)を所持していない人が水上バイクを運転するとどうなる?

免許をそもそも取得していない人が水上バイクを取得した場合、30万円以下の罰金となります。
また、免許を取得していても、不携帯の場合、10万円以下の罰金となります。

注意すべきは水上バイクのオーナーの方で、免許を持っていない人に水上バイクを貸し出したオーナーは100万円以下の罰金となる可能性があります。

水上バイクは「トラブルが多い」イメージが既に付いていますので、水上バイクに乗っていると、遠くから海上保安庁の船が見ていることもよくあります。
こんなことで罰金を食らわないようにしましょう。

水上バイクの後ろに乗る

最近発売されている水上バイクはほとんどが3人乗りか1人乗りです。
3人乗りの水上バイクなら、運転者の後ろに一緒に乗ることが出来るため、水上バイクの運動性能を存分に感じることが出来ます。
ただ、自分で運転してないので、加速のタイミングなどがわからなくて、怖い時があります。
運転者としっかりコミュニケーション取りながら乗りましょう。

ハワイなら免許なしで水上バイクを運転できる!

水上バイクの運転に免許が必要なのは、あくまで日本のルールです。
海外に行けば海外のルールに従うことになります。

海に囲まれた太平洋の孤島の『ハワイ』では、水上バイクに免許無しで乗ることが出来ます。
なので、ハワイに行く機会があれば、水上バイクに乗れるオプショナルツアーに申し込んでみてください。

現代の水上バイクは「水の上でこんなにスピード出るの!?」っていうくらい性能が高いので、びっくりしますよ。
バナナボートに乗っている時は、安全のために水上バイクもスピードをあまり出しませんが、水上バイク単体だとものすごく早いです。
そして、水上には道路のような速度制限はありません。
だからこそ、心のブレーキはしっかり握りしめておきましょう。