高性能な水上バイクに搭載されているスーパーチャージャーとは
水上バイクの世界でも、高性能機は300馬力の世界です。
そんな高性能な水上バイクには高性能なエンジンが搭載されています。
ヤマハであればSVHOエンジン、カワサキならULTRA 310シリーズに搭載されているエンジン、SeaDooならパフォーマンスモデルに搭載されているRotax 1630 ACEエンジン
これらは各社全てスーパーチャージャーが付いています。
スーパーチャージャーこそ高性能の証なのです。
スーパーチャージャーとは
エンジンは空気を吸って、圧縮して、爆発させて、ピストンを押すことで、動いています。
ピストンの往復運動を、クランクシャフトを通じて、回転エネルギーに変換することで、水上バイクならスクリューの回転運動に、車なら駆動輪の回転運動にしているわけです。
このような動力の作り方をするエンジンを『レシプロエンジン』と呼びます。
水上バイクをよく『ジェット』と言いますが、決してジェットエンジンが付いているわけではありません。
そして、エンジンには最初の工程で、空気を燃焼室に吸い込む『吸気』という工程があります。
スーパーチャージャーの出番はここです。
スーパーチャージャーはエンジンの吸気口前に取り付けるファンで、エンジンが空気を吸いやすいように、空気圧をかけておく装置です。
スーパーチャージャーがチャージするのはパワーというより空気なんですね。
ターボチャージャーとスーパーチャージャーの違い
車に乗る方はターボチャージャーはよくご存じだと思います。
昨今では、環境性能の観点から、ダウンサイジングターボが流行っており、軽自動車や小型車にはほとんどターボが付いていますよね。
実はこのターボも役割としてはスーパーチャージャーと同じで吸気圧をかける装置(過給機)になります。
では、ターボチャージャーとスーパーチャージャーの違いは何かというと、空気圧をかけるファンの動力をどこから得ているかが違うんですね。
ターボチャージャーは、エンジンからの排気圧でファンを回して過給します。
対して、スーパーチャージャーは回転するエンジンのクランクシャフトから動力を得ています。
ターボは排気圧(空気の力)で過給ファンを回しているため、物理的に動力と繋がっているわけではないんですね。
そのため、エンジンの回転数が低い時はあまり排気圧がかからず、過給も発生しにくいです。
そして、回転数が上がってくるにつれ、排気圧がかかって、過給ファンも回り始めます。
大きな過給ファンを付けるとそれだけ過給出来る空気圧も増えるのですが、ファンを回すための力もたくさん必要になってしまい、結果的にレスポンスの悪いエンジンになってしまうので、小さなファンや大きさの違うツインターボが用いられることが多いです。
対して、スーパーチャージャーはエンジンのクランクシャフトと物理的に繋がっています。
そのため、エンジンが少しでも回っていれば、過給ファンが回ってくれて、ターボと比較するとレスポンスが良いと言われます。
ただ、低回転で回ったとしても、それが過給できるほどの回転力になるかは別の話で、スーパーチャージャーが本格的に力を発揮するのは高回転時になります。
スーパーチャージャーによく出てくる『インタークーラー』とは
ターボやスーパーチャージャーにはお決まりのように、「インタークーラー付き」と書いてあります。
このインタークーラーって何を冷やしているのでしょうか。
話は変わりますが、みなさんキャンプはしますか?
キャンプやサバイバルグッズの中に『ファイヤーピストン』という物がありまして、筒の中に燃える物を入れて、棒で蓋をして、勢いよく棒を筒の中に押し込むと可燃物に引火するという仕組みです。
でんじろう先生がとても良い動画をYoutubeに掲載してくれていました。
『なぜ引火するか』ですが、棒と筒の摩擦熱ではありません。
筒の中の空気が棒を押し込んだことで圧縮され、空気が圧縮されたことによって熱を持って、その熱が可燃物に火をつけたのです。
さて、過給機の話に戻りますが、過給機も空気を集めて圧縮する装置です。
空気を圧縮すると熱くなります。空気が熱いとエンジンにとって良いことなんてないんですね。
- 空気は温度が高いと膨張してしまって圧力がかかりにくくなる
- 空気が熱いと不正燃焼を起こしやすくなる
だから、ターボやスーパーチャージャーで集めた空気は冷やしてやる必要があるんです。
そのためのクーラーがインタークーラーというわけです。